新卒者の採用選考が早期化しないように、経団連から「新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章」が公表されています。
倫理憲章の成り立ち
以前は、「就職協定」という大学、日経連、文部省、労働省を中心とする「就職問題懇談会」が1953年に作ったルールによって、採用活動に一定の歯止めが掛けられていました。
しかし、「就職協定」には法的拘束力がなく、企業の自主的な努力に頼るものであったため、効力が無く1996年に廃止になってしまいました。
そこで新たに設けられたのが、「新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章」なのです。
新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章の内容
2006年度の倫理憲章
- 正常な学校教育と学習環境の確保
- 採用選考活動にあたっては、正常な学校教育と学習環境の確保に協力し、大学等の学事日程を尊重する
- 採用選考活動早期開始の自粛
- 在学全期間を通して知性、能力と人格を磨き、社会に貢献できる人材を育成、輩出する高等教育の趣旨を踏まえ、学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、採用選考活動の早期開始は自粛する。まして卒業学年に達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎む
- 公平・公正な採用の徹底
- 公平・公正で透明な採用の徹底に努め、男女雇用機会均等法に沿った採用選考活動を行うのはもちろんのこと、学生の自由な就職活動を妨げる行為(正式内定日前の誓約書要求など)は一切しない。また大学所在地による不利が生じぬよう留意する。
- 情報の公開
- 学生の就職機会の均等を期し、落ち着いて就職準備に臨めるよう、企業情報ならびに採用情報(説明会日程、採用予定数、選考スケジュール等)については、可能な限り速やかに、適切な方法により詳細に公開する。
- 採用内定日の遵守
- 正式な内定日は、10月1日以降とする
- その他
- 大学院修士課程修了者の採用選考においても学習環境の確保に十分留意する。また高校卒業者については教育上の配慮を最優先とし、安定的な採用の確保に努める。
新規学卒者の採用選考に関する企業の倫理憲章の効果
就職協定と同じように、倫理憲章も法的拘束力を持っていないため、企業への徹底効果は非常に低いと言えます。
また、近頃の売り手市場が、さらに、企業の採用選考を早期化させているというのが実態です。
ただ、学生側は、卒業学年は論文作成などが忙しい事や、企業が4月1日から一斉に採用活動を始めると参加できない企業が出てくるため、採用選考の早期化を必ずしも問題視しているわけではないようです。
とは言え、大学の2年や3年時など極点に早い時期に採用活動を行われる事は、学生にとっても歓迎できる事ではないでしょう。
そういう意味では、この倫理憲章の存在が、極端に早期に採用活動をする事の歯止めになっているのは事実ですので、有名無実と言われながらもこれからも存在していくのではないでしょうか。